診療ノート|塩筑医師会

#06 不整脈について

【しいな医院 椎名 裕之】

心臓は全身に血液を送るポンプの働きをしている臓器で、安静時なら1分間に50~100回程度で拍動をしています。この一定のリズムが乱れて心臓が拍動するのが不整脈で、脈が遅い場合を徐脈、早い場合を頻脈と言います。

不整脈の症状

不整脈の症状には以下の様なものがあります。
1.動悸
2.胸部圧迫感
3.呼吸困難、息切れ
4.めまい
5.失神

外来を受診する不整脈の患者さんもうち最も多い症状はなんと言っても動悸で、「ドキッとする。」、「ドキドキする。」などと訴えます。不整脈を正確に診断するためには、発作中の心電図が必要になりますので、初診時に確定診断がつくことはむしろ少なく、多くの場合患者さんの話をよく聞いて、どのような不整脈なのか推定することになります。

・ 発作はいつ起こるのか。(昼なのか夜なのか) どのように起こるのか。(突然なのか)
・ どのくらい持続するのか。
・ 誘因はあるのか。(飲酒、たばこ、食事、運動など)
・ 動悸以外の症状はあるのか。(胸痛、冷汗、めまい、失神など)

多くの人が心臓の病気=突然死を連想されるかと思いますが、不整脈を心配して受診する患者さんも、漠然とした不安感を抱えている人が多いように思います。そんな患者さんに対しては「動悸があって苦しいということは意識がしっかりしてるいということだから、たとえ不整脈であっても心臓から血液が拍出されて脳に流れているので、心配しなくても大丈夫ですよ。」と説明するようにしています。不整脈の症状で本当に注意が必要なのは冷汗やめまい(血圧低下の症状)や失神(心停止)であり、患者さん自身が不整脈が原因とは思っていないこともあります。

不整脈の診断

前述したとおり、確定診断には発作時の心電図記録が必要になります。発作中に受診していただければ診断は簡単で、そうでなくても24時間心電図検査(ホルター心電図)や運動負荷心電図(トレッドミル、エルゴメーター)などで発作が確認できれば確定診断に至りますが、発作頻度が少ないもの、持続時間の短いものは診断がつかないことも少なくありません。このような場合でも、心疾患に合併した不整脈や運動負荷で悪化する不整脈は重症なこともあるので、心臓に器質的な病気がないことや心機能が低下していないことは確認しておくことが必要です。

不整脈の治療

不整脈で治療が必要になる場合は以下に示す通りです。
1.不整脈により生命の危険がある。
2.不整脈により心臓の働きが損なわれる。
3.自覚症状が強く、患者さんの日常生活が制約される。

これ以外の場合は積極的に治療せず、経過観察のみとなる場合がほとんどです。なぜなら、抗不整脈は一般に心臓に対して抑制的に作用するものが多く、催不整脈作用と言ってより重篤な別の不整脈を誘発してしまうこともあるからです。不整脈による自覚症状は個人差が大きく、1回の不整脈で強く症状を訴える人もいれば、不整脈が持続していても全く自覚症状がない人もいます。自覚症状が強くても軽症の不整脈であれば、安定剤などを処方して気にしないようにしてもらうほうがいい場合があります。

薬剤以外の治療法としてはカテーテルを用いた治療や手術療法があります。
・カテーテルアブレーション(焼灼術)
頻脈性不整脈に対し、不整脈の原因となっている場所を高周波通電で焼切るという根治療法です。
・人工ペースメーカー
徐脈性不整脈に対し、脈拍を速くしたり、正常なリズムに戻すために体内に植え込むものです。
・植え込み型除細動器(ICD)
心室頻拍や心室細動などの意識消失を伴うような致死的不整脈に対し、あらかじめ体内に電気ショックの機械を植え込むという治療です。
・開胸手術
最近は単独で行われることは少なくなりましたが、頻脈性不整脈の対する凍結凝固療法(cryosurgery)や心房細動に対するメイズ手術などがあります。

主な不整脈

■徐脈性不整脈

・洞機能不全症候群
心臓内のペースメーカーである洞結節の異常により、洞結節の興奮が起こらない洞停止や徐脈と頻脈を繰り返す場合があります。(徐脈頻脈症候群) 治療はにはペースメーカーが必要になります。

・房室ブロック
心房と心室の間で電気信号がうまく伝わらない状態で、程度によりⅠ度からⅢ度まであります。無治療でいいものからペースメーカーが必要なものまであります。

■頻脈性不整脈

・期外収縮
もっとも多い不整脈で、本来脈がでるタイミングより速い時期に心臓が動いてしまうもので、患者さんはドキっとしたり、脈がとぶなどと言って受診されます。心臓に病気がなく、単発であれば、治療の必要はありません。

・上室性頻拍
突然動悸が始まり突然終わる不整脈です。副伝導路と言われる複数の電線(電気回路)が存在し、電気信号が旋回(リエントリー)することにより発生する不整脈です。カテーテルアブレーションにより根治が期待できます。

・心房細動
心房が痙攣し心房収縮が消失した状態で、脈がまるで不規則に触れることから脈をとるだけで診断が可能です。発作性のものは動悸などの症状がありますが、慢性化したものは自覚症状が消失し、心不全となって気が付かれることもあります。心源性脳血栓塞栓症の原因としても重要な不整脈で、心房細動の患者さんはそうでない人に比較して約5倍脳卒中の発症リスクが増加します。脳卒中の予防として抗凝固療法が行われ、今まではワーファリンしか使用できませんでしたが、ここ1~2年で新しい薬がつぎつぎと開発、発売され、治療の選択肢が拡がりました。最近発売された薬はワーファリンと比較して効果は同等でも、副作用の出血、特に脳出血の頻度を減少させることが明らかになっています。

・心室頻拍
心室だけが勝手に速く動く不整脈で、虚血性心疾患や心筋症の伴って起こることが多く、血液循環が保てなくなって、死に至る可能性もあります。一部には予後良好な場合もありますが、あらゆる治療手段を駆使して突然死の予防をする必要があります。

・心室細動
心室が痙攣している状態で、心臓からの拍出は一切なくなります。ただちに電気ショック治療を施行し、正常な拍動を回復させなければ死に至る不整脈です。

しいな医院 椎名 裕之

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