診療ノート|塩筑医師会

#15 熱傷

【横山内科医院 岩脇 理佳】

概論

やけど(熱傷)は発症頻度が高く、やけどをすると皮膚組織は熱によって破壊されてしまうので、皮膚の持つバリア機能は失われてしまいます。やけどでただれてしまった皮膚はジクジクしたり、感染しやすくなったりするため、適切な局所処置が必要です。

1. 冬に多く、次いで春、秋、夏の順です。
2. 10歳以下、20歳代、10歳代の順に多く、特に歩行開始期前後の乳幼児が最も受傷率が高く、その多くが両親の不注意によるもので、熱傷の予防上の課題となっています。
3. 原因として、高温の液体、高温の個体、火炎の順に多いです。
4. 受傷面積は体表面積の5%以下が圧倒的に多いが、それ以上の広範囲例も膨大な数にのぼります。
5. 受傷部位は高温の液体、高温の個体では四肢に、火炎では顔面と手に受傷率が高いです。
6. 受傷深度はⅡ度熱傷(詳細は後記)が最も多いです。

重症度判定

熱が表皮、真皮、皮下組織の順に作用するので、作用が及んでいる深さよって重症度が決まります。深さによって局所の反応が変化します。

熱傷深度 原因 皮膚の状態 経過
ⅰ度
表皮のみ
日光
中高温の熱湯
発赤
軽い痛み
水疱はなし
数日で自然に治る
傷跡は残らない
ⅱ度
真皮まで
浅いⅱ度
真皮表層まで
ひどい日焼け
熱湯
水疱ができる
ヒリヒリして痛い
2週間で治る
傷跡は残らない
色素沈着が残りやすい
深いⅱ度
真皮深層に及ぶ
火焔
天ぷら油
ガス爆発
化学熱傷
水疱ができる
水疱の底は白っぽい
痛みは少ない
自然に治るには3-4週間から数か月かかる
手術が必要
傷跡が残りやすい
ⅲ度
皮下組織より深部に及ぶ
着衣の炎上
電撃症
低温やけど
白色~褐色で皮膚は硬い
痛みは感じない
自然治癒は難しい
手術が必要
傷跡やひきつれが残る

熱傷深度、受傷面積、受傷による合併症と受傷以前の疾病(心臓・腎臓疾患、代謝障害など)により熱傷の重症度が決まります。(Artzの基準)

重症熱傷 総合病院で入院加療 1. ⅱ度30%以上
2. ⅲ度10%以上
3. 顔面・手・足・陰部熱傷
4. 気道熱傷
5. 電撃症・化学熱傷
6. 骨折・軟部組織損傷を併発
中等症熱傷 一般病院へ入院加療 1. ⅱ度15-25%
2. ⅲ度10%未満
軽症熱傷 通院加療 1. ⅱ度15%未満
2. ⅲ度2%未満

受傷面積は範囲が狭いときはやけどした人の手のひら1枚分を1%とします。(手掌法) 範囲が広いとき成人は9の法則、小児は5の法則が用いられます。

治療

治療は重症であれば重症であるほど、局所処置に加えて全身管理が必要です。
しかし一般開業医では軽症熱傷のみを扱うと思われますので、局所処置のみ説明します。
受傷初日は炎症を抑える目的のためにステロイド外用剤をたくさん塗ります。
2日目からは抗菌外用剤で創部をしっかりと覆うように塗ります。
治癒遷延して潰瘍になったものは(受傷後2週間過ぎ)は抗潰瘍剤に切り替えます。
軽症例は基本的には内服、点滴治療は必要ありませんが、感染をおこしたときなどは必要に応じた治療を追加する必要があります。

一般市民への指導

一般市民には以下のように啓蒙しているところがあります。

1. 早く患部の熱をとるため水道水で30分冷やします。
2. ガーゼ、清潔なタオルなどで包んで水疱は破らないことが大切です。
3. 被服の上から熱湯がかかった場合などは無理にぬがせないで、その上から水道水をかけるようにして十分冷やします。
4. 痛みのある間、氷嚢で包帯などの上から冷やします。
5. 小さなやけどでもできるだけ早く医師に診せることが大切です。化膿すると深いやけどに移行します。
6. チンク油、みそ、醤油、アロエなどをぬらないようにしてください。傷口は汚れないようにすることが大切です。

乳・幼児のいる家庭の指導

乳幼児の家庭内での偶発事故が多いため、その原因となる熱源の安全対策が必要である。特に予防上大切なことは家人に対する啓蒙です。

1.8か月未満児
赤ちゃんを抱っこしたままお茶やコーヒーを飲まない。
コタツの中やストーブのそばに赤ちゃんを寝かせない。
赤ちゃんのいる部屋の床やテーブルにカップ、ポット、鍋などを置かない。

2.8か月‐2歳児
炊事中の台所には子供を入れない。
ストーブの上にヤカンや鍋を置かない。
鍋は柄の長いものを使わない。
テーブルの上に熱い飲食物を置きっぱなしにしない。
熱い飲み物は子供が寝てから楽しむ習慣をつける。
アイロンなど高温を生ずる器具は子供が寝てから使用する。
テーブルクロスははずすようにする。
居間や食堂に高温飲食物の入った鍋やヤカンを持ってこない。必ず食器に入れ、少し冷ましてから持ち運ぶ。
ストーブはできるだけ使用しない。防御柵はかえってもたれかかり、転倒、受傷の原因となることもある。
ポットやヤカンの置き場所を台所などの子供が触れることができない場所に決め、これらを絶対に持ち運ばない。

3.3歳児以上
日頃から熱いもの触れない教育を徹底する。
炊事中の台所には子供を入れない。
ストーブには防御柵をつける。
アイロンなど高温を生じる器具は子供が寝てから使用する。
ポットは勝手に使用できないよう安全装置をしておく。
居間や食堂に高温飲食物の入った鍋やヤカンを持ってこない。必ず食器に入れ、少し冷ましてから持ち運ぶ。
風呂場はカギなどで勝手に入れないようにする。
マッチ、ライターを置きっぱなしにしない。 花火遊びを勝手にさせない。

上記の指導はコピーして患者に渡してもよいでしょう。

終わりに

やけどはいくら注意をしていても、大なり小なり皆が経験する事故です。少しでもやけどに対する知識があれば、被害を少なくすることができます。そのような希望をもって今回熱傷をテーマに書きました。皆様のお役にたてれば幸いです。

横山内科医院 岩脇 理佳

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