診療ノート|塩筑医師会

#20 心房細動の診療

【サン・クリニック塩尻 河野 浩貴】

心房細動は加齢とともに増加し、70歳代の5%、80歳代の10%程度の割合で起こるといわれているくらい比較的起こりやすい不整脈ですので、動悸がする、不整脈がある、健康診断で心房細動といわれた等の訴えで専門医ではない先生方の診療所に受診される方もおられるかと思います。そういった時の参考になればと考え、専門診療の第一線を退いた身ではありますが、「診療ノート」を書かせていただきます。

”動悸がする”、”不整脈がある”といって受診された患者さんが心房細動であった場合の話ですが、患者さんに重篤感があれば、特に血圧が低下して全身状態が悪い場合は、すぐに専門医療機関に診療を依頼するのがよいでしょう。そういう方はそもそも背景に何らかの疾患を抱えていることが多く、よかれと思ってしたことが裏目にでてしまうことにもなりかねませんので抗不整脈薬の投与はむしろ避けるべきと考えます。

一方、重篤感のない方の場合は訴えの主体は動悸や脈の乱れに伴う不安感に由来するものですし、健康診断等で心房細動の指摘を受けて受診した、あるいは通院中の患者さんが心房細動であることをたまたま"発見"したという場合は症状がないか、あっても軽度であることがほとんどですので、現実問題として先生方のところで心房細動そのものに対して早急な治療が必要とされるようなことはまずないだろうと思います。

心房細動の診療の目的は、それぞれの患者さんに応じた治療介入をすることであって、心電図を洞調律にすること、それ自体が目的というわけではありません。

ですから診療の流れとしてはまず”心房細動とはどういう病気であるのか”ということを患者さんに理解していただくことから始めて、引き続き ・心房細動そのものをどうするのか ・血栓塞栓症の予防をどうするのか ということについて患者さんと考えていくことになります。

どの時点で専門医療機関へ紹介するのか、という点については、各先生方の考え、患者さんの希望、専門医へのアクセスのしやすさ等にもよりましょうが、症状にひどく悩まされている方や背景に器質的心疾患がありそうな方であれば、早い段階で専門医療機関での診療を依頼するのがよいでしょう。

徐脈や頻脈に伴う症状がなく、病歴、一般的な診察、心電図所見等で問題がない方の場合は、洞調律への復帰や維持にこだわるのかどうか、抗凝固療法はどうするのか、具体的にどの薬剤を選択するのか等、患者さんと一緒に方針を決めて診療を開始し、必要に応じて専門医に紹介するということでよいでしょう。

専門的な診療といっても、要は前述した二つのポイント・心房細動そのものをどうするのか~洞調律にこだわるのか~・血栓塞栓症の予防をどうするのか~抗凝固療法をどうするのか~ということについて専門的な検査の結果と患者の志向、嗜好から総合的に判断して具体的な方針を決定するということです。

専門医からすれば、紹介元の先生と患者さんとの間で話を深めておいていただければその後の診療がスムーズに進められますし、そういう先生であれば診療が一区切りついたところで後の診療を任せやすいわけですから、患者さん、紹介元の先生、紹介先の先生の"三方よし"ということになります。

患者さんの背景はさまざまですし、同じように話をしても理解がよい人、よくない人さまざまです。患者さんの反応を見ながら端折ったり、細かく話をしたりして説明することになりましょう。前述した二つのポイントについては新規経口抗凝固薬、カテーテルアブレーション治療等のトピックも含め、ガイドラインを参考に整理しておくことをお勧めします。


参考文献:心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)
www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf

サン・クリニック塩尻 河野 浩貴

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