診療ノート|塩筑医師会

#34 機能性胃腸症 [ 機能性ディスペプシア、functional dyspepsia(FD) ]

【宮原医院 宮原 秀仁】

[機能性胃腸症とは]
胃もたれや胃の痛み、食後膨満感、胃部不快感等の症状があるにもかかわらず、上部消化管内視鏡検査等の検査をしても症状の原因となるような癌や潰瘍といった器質的病変が見つからない時、これを機能性胃腸症と呼びます。かつては慢性胃炎、神経性胃炎、胃下垂、胃アトニー、胃痙攣等と言った病名を付けられることが多く、機能性胃腸症と呼ばれるようになったのは比較的最近になってからです。慢性胃炎と言うのは病理組織学的に慢性炎症が見られることをいい、それを病名として用いるのはおかしいというわけです。消化器の病気の中では比較的頻度の多い病気で、日本では4人に1人がこのような症状を訴え、そのうち3割の人が医療機関を受診しています。現代病の代表的な疾患の一つです。これらの症状によってQOLが著しく障害されており、この疾患に対する臨床的意義は大きいと考えられます。2007年に、当時内閣総理大臣であった安倍晋三がこの疾患を理由に辞任したのは有名な話です。

[原因]
胃の働きが悪くなっていたり伸縮性が低下していたりする運動機能障害、胃酸の刺激を受けやすくなっている知覚過敏の状態、ピロリ菌による慢性炎症(除菌治療により症状が改善することがある)を起こしていたり、精神的・肉体的ストレスや過労による脳腸相関異常等が考えられています。このような状態が継続することで胃の機能が障害され、様々な症状を引き起こすのです。

[発症機序]
胃に食物が流入してくると、胃の上部が拡張し多くの食物を貯留しようとしますが、この機能が上手く働かず胃の中にとどめておくことができなくなります。その結果食後の膨満感や疼痛が引き起こされるのです。また十二指腸への排出が障害される場合は食物の胃内残留時間が長くなり、胃もたれが起こります。胃の貯留機能と排出機能は密接に関連しており、胃貯留機能が障害されると食物が短時間で胃酸と一緒に十二指腸に送られるため、十二指腸は胃の排出機能を抑制し、胃から排出されにくくなるのです。

[症状]
胃もたれ、胃部膨満感、吐き気、胃の痛み、胸焼け、げっぷ、咽頭部つかえ感等人によって様々な症状を訴えます。BomeⅡ分類では主症状によって次の3型に分類します。
潰瘍型:心窩部痛が主症状
運動不全型:悪心・嘔吐、胃もたれ、膨満感、食欲不振等が主症状
非特異型:上記二つの型に分類できず、いずれかの症状がある。

[検査・診断]
辛いと感じる食後のもたれ感、早期膨満感、心窩部痛、心窩部灼熱感の症状のうち一つ以上があり、症状の原因となりそうな器質的疾患がなく、6ヶ月以上前から3ヶ月間はこのような症状が続いている時、機能性胃腸症と診断します。この場合、必ずX線検査や内視鏡検査で器質的疾患を除外してください。しかしながら日常の診療ではこのような厳格な診断基準を満たさなくても、上腹部症状を訴える時には機能性胃腸症に準じた治療を開始した方がよいでしょう。また食欲不振、体重減少、睡眠障害を伴う場合うつ病との鑑別診断が重要です。

[治療]
症状によって定義されている疾患なので、症状を改善させることを目標に治療を行います。様々な原因が複雑に関係し合って発症しているものと考えられるため、治療には以下の様々な薬剤を用います。また規則正しく、消化のよいものを、よく噛んでゆっくり食べ、食べ過ぎないようにするといった食事指導も重要です。
1)消化管運動調節薬:ガスモチン、ガナトン、アコファイド等
2)酸分泌抑制薬:プロトンポンプ阻害薬、H2受容体拮抗薬
3)鎮経剤:ブスコパン、コリオパン等
4)漢方薬:六君子湯、真武湯、補中益気湯等
5)抗不安薬:メリスロン、セルシン等
6)抗うつ剤:ドグマチール、パキシル、ルボックス等


時にはこういった薬剤を組み合わせて処方します。症状を見ながら処方薬を変えて行くことも必要です。治療効果が持続しないことも多く。患者が複数の医療機関を転々と受診していることも少なくありません。まずは患者さんの訴えをよく聞いてあげることが大切です。

宮原医院 宮原 秀仁

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