診療ノート|塩筑医師会

#39 ほくろの癌:メラノーマ(悪性黒色腫)

【皮フ科わくいクリニック 涌井 史典】

ほくろの癌のメラノーマ(悪性黒色腫)malignant melanoma(以下メラノーマ)は皮膚癌のなかでは最も予後が悪い病気の一つで、進行すると全身に転移して死に至る恐ろしい病気です。日本でのメラノーマの死亡者数は年々増加し、およそ40年間に4倍程になっています。マスコミで時々とりあげられていることもあり、皆さんに知っていただきたい病気のひとつですので簡単に記載します。

<病型分類:臨床像>
4つのタイプに分けられます。

1.末端黒子型(まったんこくしがた) acral lentiginous melanoma
主に足の裏や手足の爪にでき40~50歳に多い。メラノーマ全体の40%を占め日本人に一番多い。褐色から黒色へと変化して一部が盛り上がったり逆に潰瘍を作ることもある。

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2.表在拡大型(ひょうざいかくだいがた)superficial spreading melanoma
全身のどこにでもできる。早期には広く浅く広がり、次第に色が濃くなっていき一部が大きく盛り上がっていく。体幹や四肢で比較的中枢側によくできる。最近日本に増えている。

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3.結節型(けっせつがた)nodular melanoma
全身のどこにでもできる。早期からドーム状に盛り上がる。
成長が早いのが特徴で最も悪性度が高い。

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4.悪性黒子型(あくせいこくしがた)lentigo maligna melanoma
70歳以上の高齢者に多く紫外線の影響を受けて顔にできやすい。薄い茶色からしだいに黒く変化し数年かけてゆっくりと大きくなってやがてしこりやこぶ状になる。

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<診断>
肉眼とダーモスコピー(デルマトスコピー)により診断します。ダーモスコピーは痛くも痒くもなくメラノーマか否か簡便にわかる方法です。病変に直接あてて医師の眼で拡大してみる器械です。ほとんどの皮膚科で置いてあります。

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これらでも診断がつかないときは、皮膚を採って顕微鏡で見たり、その他いろんな方法で検査します。ただし、メラノーマに直接メスを入れる生検は行えません。早い時期の段階で、メラノーマを肉眼的に疑うサインとしてABCDEルール(American Cancer Society)が有名でわかりやすいです。A~Eのそれぞれの頭文字をとった状況をあてはめてメラノーマかどうか判断するというサインです。

A:asymmetry 左右不対称で不規則な形
B:border irregularity 境界が不整だったり不鮮明
C:color variegation 色調の濃淡が多彩
D:diameter 大きさが6mmを超える
E:evolution 大きくなったり、表面が隆起したりする


これらのA~Eの変化がみられたときはメラノーマが疑われますのでなるべく早く皮膚科専門医を受診してください。

<治療>
手術が中心です。再発を予防するために1~2cm大きく皮膚を切除します。進行してリンパ節に転移した場合は手術をしてリンパ節とその周囲を大きく切除します。肺、肝臓、脳、骨やその他の部位に転移した場合は、手術は難しく薬物療法を行います。

最近は免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブやイピリムマブ等の登場で以前に比べると予後は良くなりました。また、分子標的治療薬などにより新しい治療法の研究が行われており、治療成績が良くなっています。

<予後>
腫瘍の厚さ(tumor thickness) や病変が皮膚のどの深さまで及んでいるか(level)、リンパ節へ転移しているか否かなどからステージ分類を行います。ステージが進むほど予後は悪くなります。早期であれば5年生存率(5年経った時点でどのくらい生きていられるかという割合)は95%以上です。進行すると予後は悪くなりますが、免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬等により治療できる病気になってきました。

メラノーマは恐ろしい病気ですが、早期に診断して治療すれば予後は良好です。ダーモスコピーの普及により以前に比べてメラノーマと診断しやすくなりました。少しでも普通のほくろとは異なる、あるいは何となくおかしいと思ったら早期に皮膚科専門医に診てもらって下さい。



参考文献,書籍
1.皮膚科学 第8版 上野賢一、大塚藤男 金芳堂
2.NHKテレビテキスト きょうの健康 2016 3月号
3.皮膚科の臨床 10 2015 金原出版

皮フ科わくいクリニック 涌井 史典

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