診療ノート|塩筑医師会

#46 原発性胆汁性胆管炎

【ひろおか上條クリニック 上條 敦】

はじめに
肝機能障害の原因としてアルコール、脂肪肝、ウイルス性肝炎、薬物などがまず挙がると思いますが、そのほかにも多くの原因があります。その中で今回は、原発性胆汁性胆管炎(PBC;primary biliary cholangitis)をとりあげたいと思います。
以前は原発性胆汁性肝硬変(PBC;primary biliary cirrhosis)と呼ばれていたのですが、最近病名が変更されました(後述)。
日常臨床では、あまりなじみがないかもしれませんが、肝機能障害の原因の一つとして決してまれな疾患ではなく、また、診断自体は難しいものではないため、今回PBCについて再確認して診療に役立てていただけたらと存じます。
まず、概念、診断、治療について簡単にまとめ、そのあとに診療の実際について述べたいと思います。

概念
中年以降の女性に好発し、肝内小型胆管が自己免疫学的機序によって破壊され、慢性胆汁うっ滞を生じる疾患である。以前は肝硬変に進展して初めて診断された症例が多かったが、検査法や治療法の進歩により現在では約80%が無症候性でその多くは肝硬変に進展していない。
また、PBCはシェーグレン症候群(15%)、慢性関節リウマチ(5%)、慢性甲状腺炎(5%)など他の自己免疫疾患と合併することがある。胆道系酵素の上昇だけでなく肝トランスアミナーゼの上昇も認められる場合は自己免疫性肝炎(AIH;autoimmune hepatitis)の合併(PBC-AIHオーバーラップ症候群)の可能性を考える。また、慢性胆汁うっ滞による脂溶性ビタミンの吸収障害が起こることにより、骨粗鬆症を合併することがある。
 
診断基準
① 慢性的な胆道系酵素の上昇
② 抗ミトコンドリア抗体(AMA;anti-mitochondrial antibody)の検出
③ 非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC;chronic non-suppurative destructive cholangitis)に代表される特徴的な病理組織所見

これら3項目のうち2項目以上満たせばPBCと診断する。
 
治療
無症候性の場合はウルソデオキシコール酸(UDCA)やベザフィブラートの内服が中心である。症候性や肝硬変に進展している場合は、症状に応じた治療が必要。
  

*病名の変更について

上述のように、現在では検査法や治療法の進歩により肝硬変に進展する前に診断される症例が多くなってきました。従って原発性胆汁性“肝硬変”という病名は疾患の病態を反映していないことも多く、患者さんに誤解を与えることもありました。
そのような状況を踏まえ、2016年4月に日本肝臓学会などでは原発性胆汁性肝硬変(PBC;primary biliary cirrhosis)から原発性胆汁性胆管炎(PBC;primary biliary cholangitis)に変更することが承認されました。

診療の実際
肝機能障害の原因は多岐にわたりますが、健診などで胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇を認める場合はPBCの可能性を考えなくてはなりません。
胆道系酵素の上昇がさまざまな原因で長い間放置されていると、肝硬変に進展して初めてPBCと診断される可能性があります。実際、高齢になってはじめてPBCと診断された症例は少なくありません。また、アルコール性と診断され禁酒するも胆道系酵素の改善を認めず、患者の医師への禁酒の報告が疑われていた症例などもありました。
検査法や治療法が進歩した現在でも、肝硬変に進展して診断されるPBCが存在する背景には、このように診断されずに長年経過している症例がまだ多いことを示唆しています。従って、肝硬変への進展を防ぐためには早期に診断、治療を開始することが重要なのはいうまでもありません。
PBCの診断基準では肝生検による組織所見(上記診断基準③)が含まれていますが、PBCと診断するために必須ではありません。すなわち、慢性的な胆道系酵素の上昇(上記診断基準①)とAMA陽性(上記診断基準②)が確認できればPBCと診断できます。従って、肝臓専門医でなくとも診断は可能ということになります。
PBCと診断された場合は、次に合併症のチェックや画像評価、および肝生検で組織学的評価(線維化の程度など)を行い、治療に入ります。一般的にはUDCAが第一選択薬で、多くの症例で胆道系酵素の改善が認められます。
また、他の慢性肝疾患と同様、肝硬変への進展や肝癌の発生の有無をチェックするため、画像検査(US、CTなど)は定期的に行う必要があります。
AMA陰性であってもPBCの可能性は否定できません。そのような場合は肝生検を行いCNSDCなど特徴的な所見を確認することが必要です。

まとめ
慢性的な胆道系酵素の上昇を認める症例はPBCも念頭におき、診断をすすめます。AMA陽性であれば診断が確定されます。アルコールや体質などが原因であると説明されている症例も、一度PBCを疑ってAMAをオーダーして確認していただけたらと存じます。PBCと診断された場合は、以後の治療方針の確認のため肝臓専門医の診察をご依頼下さい。

ひろおか上條クリニック 上條 敦

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