診療ノート|塩筑医師会

#55 じんま疹について

【松本歯科大学病院 皮膚科 林 宏一】

じんま疹は、皮膚に蚊に刺された時にできるような赤い盛り上がりのある発疹(膨疹)が出たり消えたりする病気です。皮膚の限局性の浮腫(むくみ)によるもので、多くはかゆみを伴います。膨疹は全身のどこでも出現し、大きさや、持続時間は様々です。また皮膚や粘膜の深い部分を中心として限局的に浮腫を生じるものを血管性浮腫と呼んでいます。
じんま疹は、特発性のじんま疹と刺激誘発型のじんま疹、血管性浮腫の大きく3つに分類されます。

<じんま疹の分類>
1. 特発性じんま疹
直接的な原因や誘因なく自発的に膨疹が基本的に毎日または毎日のように出没するもので、医療機関を受診するじんま疹の中では最も多いものです。個々の膨疹の形、大きさはさまざまで、持続時間は数十分から数時間以内のことが多いですが、2、3日続く場合もあります。発症してから6週間以内のものを急性じんま疹、6週間を超えるものを慢性じんま疹と呼んでいます。
急性じんま疹は1日~数日で治まるものから、「かぜ」などの感染症に伴って発症する場合など治まるまでに10日~2週程度かかるものもあります。多くは適切な治療により1カ月ほどで軽快します。
また慢性じんま疹は、夕方から夜にかけて症状が出現、悪化するものが多い傾向があります。落ち着くまでに数か月~数年かかることもあります。

2. 刺激誘発性のじんま疹
特定の刺激ないしは条件が加わった時に症状が誘発されるものです。
1)アレルギー性のじんま疹
外来物質によるアレルギー反応としてじんま疹がおこるものです。じんま疹というとすべてアレルギーが原因と思われている方が多く見られますが、実際にはアレルギーによるものは少なく、じんま疹のうちの数%とされています。
2)食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食物を食べてから2~3時間以内に運動負荷が加わることでアナフィラキシー症状がでるものです。食物は小麦、エビのことが多く、消炎鎮痛剤の内服により増悪することがあります。
3)非アレルギー性のじんま疹
外来物質によるアレルギー期序を介さないじんま疹で、造影剤の注射や、サバ、タケノコなどの摂取でおこるものです。
4)アスピリンじんま疹 
アスピリンなどの消炎鎮痛剤によって誘発される、非アレルギー性のじんま疹です。
5)物理性じんま疹 
機械的刺激による機械性じんま疹、寒冷暴露による寒冷じんま疹、日光照射による日光じんま疹、温熱負荷による温熱じんま疹、圧迫による遅延性圧じんま疹、水との接触による水じんま疹があります。
6)コリン性じんま疹
入浴や運動、緊張など、汗をかくまたは汗を促す刺激が加わった時に生ずるもので、若い人に多く見られます。小さい膨疹が出ることが特徴です。多くは数分から2時間以内に治まります。
7)接触じんま疹
外来物質との接触により生ずるじんま疹です。

3. 血管性浮腫
皮膚、粘膜部の限局した範囲の皮膚の深いところで生ずる浮腫により部分的に腫れた状態となるものです。多くの場合、顔面とくに口唇、眼瞼にみられ、数日以内に消退します。かゆみを伴わない場合もあります。
特発性の血管性浮腫、刺激誘発型の血管浮腫、ブラジキニン起因性の血管性浮腫、遺伝性血管浮腫があります。

<じんま疹の検査> 
じんま疹は問診と身体所見でまず診断します。刺激誘発性のじんま疹など原因因子の関与が考えられる場合は、適宜因子に関する検査を行う(アレルギー性のじんま疹が疑われる場合のアレルギー検査など)ことがありますが、じんま疹というだけでスクリーニング的に一律に検査を行うことはしません。
*特発性じんま疹(急性じんま疹、慢性じんま疹)の場合
急性じんま疹で、感染症等に伴う場合は血液検査を行うことがありますが、これは感染症による全身の状態を把握する目的で行われます。
慢性じんま疹の場合、典型的な症状を取る場合には、検査を行っても原因や増悪因子を特定ができないことがほとんどで、各種検査を行うことはあまりしません。

<じんま疹の治療>
ここでは特発性じんま疹(急性じんま疹、慢性じんま疹)の治療についてお話します。
特発性じんま疹は、通常非鎮静性の第2世代の抗ヒスタミン剤の内服で治療を開始します。
急性じんま疹の場合、通常量より開始し症状が消退した場合は、数日~1週ほど継続したのち、減量して中止となります。症状が強い場合には次の慢性じんま疹に準じた治療を行います。症状が重篤な場合に限り、短期間ステロイド内服を行うことがあります。
慢性じんま疹の場合は、抗ヒスタミン剤の内服を継続することにより、膨疹の出現を完全に抑制することが目標となります。ひとつの抗ヒスタミン剤を1~2週内服し、効果不十分の場合はまず倍量へ増量を行い、効果が少ない場合他の抗ヒスタミン剤の追加が行われます。これらの対処で十分に症状が抑えられない場合には、他の補助的治療薬(ヒスタミンH2拮抗薬など)が追加されることがあります。さらに症状が続く場合ステロイドを使う場合がありますが、抑制できた場合は減量して早期の離脱を図ります。以上の治療を行ってもなお症状が強い、副作用などの理由で他の方法により症状の抑制が必要な場合は、オマリズマブ(抗ヒトIgE抗体)、またはシクロスポリン(免疫抑制剤)が用いられることがあります。

<慢性じんま疹の治療期間>
抗ヒスタミン剤、補助的治療薬により症状が消失しても急に中止すると再燃することがあります。このため症状消失後同じ薬剤を1~2カ月予防的に継続して内服し、再燃がなければ、1日当たりの内服量を減量、または内服の間隔をあける、その後は3日に1度程度内服することで症状が出現しない場合まで改善したところで、いったん内服を中止します。症状出現が週2、3回程度で、1回に出現する膨疹が数個以内であれば適宜頓服に変更します。

参考文献 蕁麻疹診療ガイドライン2018 日皮会誌:128(12),2503-2624, 2018

松本歯科大学病院 皮膚科 林 宏一

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