診療ノート

#21 COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPD(シーオーピーディー)とは、タバコの煙などの有害な空気を吸い込むことによって、気管支や肺胞に傷害が生じる病気です。長期間にわたる喫煙習慣が主な原因のため、「肺の生活習慣病」ともいわれています。従来、慢性気管支炎、肺気腫と呼ばれていた疾患ですが、現在では両者とも喫煙が原因である場合がほとんどで、また両疾患が合併することが多いことから、この2つの疾患による肺疾患を合わせてCOPDと呼称するようになりました。

COPDの症状は、慢性的な咳と痰、体を動かしたときの息切れです。都会の場合は、駅の階段で息が切れるようになった、などの症状で見つかることが多いようですが、この辺りですと車社会ですので、平地歩行での息切れが出るまで気付かないということもよく経験します。

COPDの診断は、主に「スパイロメトリー検査」によって行います。この検査でもっとも注目すべき項目が「1秒率」です。「1秒率」とは、最初の1秒間に吐き出す息の量が、吐き出す息の全量の何%を占めるかを表す数値となります。検査の結果、1秒率が「70%未満」であった場合、気管支拡張薬(短時間作用型β2刺激薬)を吸入させ、もう一度スパイロメトリー検査を行います。再検査をしても、1秒率が70%未満であった場合には、COPDが強く疑われます。気管支拡張薬吸入で1秒量が大きく改善すれば、気道の可逆性が見られるということになりますので、COPDではなく気管支喘息の可能性が高くなります。

COPDと気管支喘息の鑑別は厳密にやろうとすると、とても難しいです。ただし、治療が重なる部分も多いので、実地医療ではそれほど厳密に区別しなくてもよいかもしれない、と個人的には思います。

またスパイロメトリー検査も日々の診療の中では、検査法に精通した検査技師さんがいない場合、なかなか簡単には行いにくい検査だと思います。検査自体も患者さんの努力度合いに依存するため、認知機能に障害がある患者さんに行っても、正確な結果になりにくいということもあります。

私見ではありますが、喫煙歴があり慢性的な咳や痰が続く中高年の患者さんは、COPDも念頭に置いて可能であれば治療をしていただいてかまわないように思います。診断に迷うような場合は、呼吸器専門医に紹介していただければと思います。

COPDの治療は、「禁煙」「薬物療法」「栄養管理・呼吸リハビリ」の三本柱です。薬物療法において、気管支拡張薬はCOPDの第一選択薬です。主として吸入薬が使用され、内服薬と比べ少ない分量で気管支に高濃度でいきわたり、効果も早く現れますし、全身的な副作用も軽減できるという利点があります。第一選択として使用される吸入薬の例としては、長時間作用型抗コリン薬として「スピリーバ®」「シーブリ®」、長時間作用型β2刺激薬として「オーキシス®」「オンブレス®」「セレベント®」、2つの配合剤として「ウルティブロ®」「アノーロ®」などがあります。それぞれ吸入デバイスが異なったりしますので、患者さんに合わせて選ぶことが必要です。

また、呼吸筋力が低下しないようウォーキングなどの全身運動や、呼吸体操などをする呼吸リハビリも重要です。食事は、たんぱく質を多めに摂取することが必要で、他の生活習慣病や現在の体格にもよりますが、健康な人より多くのカロリーを摂るよう推奨されています。