診療ノート

#08 避妊について

避妊には通常低用量ピル(OC:oral conrtraseption) や子宮内避妊用具(IUD:intra uterine device)の子宮内挿入など長期的に行う方法の他、
妊娠を望まない女性が
1.避妊を行わなかった
2.避妊に失敗した(コンドームが破けた、抜けた)
等の際に一時的に(その性交での)妊娠の危険性を減少させるための手段として緊急避妊(EC:emergency contraception))があります。

わが国においては長期に亘り公に承認されたECは存在しておらず、既存のホルモン剤を転用して行われてきました。ECとして最も一般的に行われてきたのがYuzpe(ヤッペ)法と呼ばれるもので、「性交後72時間以内に50μgのエストロゲン(エチニルエストラジオール)と0.5mgのプロゲステロン(ノルゲストレル)を含む中用量ピルを2錠服用、更に12時間後に2錠内服する」という方法です。この方法による妊娠率(失敗率)は約2-3%です。処方薬剤としてはプラバノールが用いられます。この薬剤は機能性子宮出血の止血や月経周期移動(旅行や結婚・試験・試合などのため予定月経を移動させる)の際に非常に有用な薬剤で婦人科領域では重宝している反面、服用時の嘔気や頭痛・倦怠感・下痢等の副作用発現率が高く、また長期服用により血栓症の発症リスクが高まる薬剤として知られています。通常は1日1錠の服用ですので1日都合4錠服用というのが結構大変であることがお解かり頂けると思います。その他性交後120時間以内にIUDを子宮内に挿入する方法も提唱されていますがコストも高く、その場限りのEC希望者にはお勧めしにくいなどの事情から現実的にはあまり行われてはいません。

最近になりYuzpe法より避妊効果が高く副作用発現率も低いレボノルゲストレル(LNG)単回投与法が推奨されるようになり、日本でも2010年12月にLNG(商品名ノルレボ)が緊急避妊薬として正式に承認され、2011年から使用できるようになりました。この方法ですとノルレボ0.75mg2錠を1回服用するだけでよく、更に妊娠阻止率もYuzpe法に比べ低下し嘔気などの副作用はあるもの低いとの報告があります。診療の現場としても副作用出現はほとんど見られずYuzpe法よりはるかに処方しやすい印象を持っています。(承認されたとはいえ保険適応外ですので高価な薬剤ですが・・・)。

以下に診療の場でEC施行の際に重要であると考えている事を述べます。

1.ECによる妊娠阻止は完全ではないことを指導すること
・EC施行に際しては現状での妊娠が除外されていること(妊娠反応や内診・超音波)
・EC施行後はある期間の後必ず受診して頂くこと(LNG服用後出血が起こることがあることや妊娠初期にも出血がある場合があることから出血があるあったからといって必ずしも妊娠が回避できたとは限らない)

2.ECはあくまで一時的な避妊法であることを認識して頂くこと
・服用すればその後の妊娠をずっと回避できるわけではないことを指導すること
・頻回に使用することは避ける様指導すること
・EC後ご希望に応じOCやIUD等の長期的かつより確実な避妊法に移行できる事を指導すること

望まない妊娠の回避は産婦人科医としての重要な責務と考えます。
インターネット等の情報のためかECの認知度は高まっているように感じます。