診療ノート

#09 認知症について

○認知症とは
認知症とは「後天的※1な脳の変化により、いったん正常に発達した知能が低下した状態」と定義されます。認知症というと物忘れを連想しますが、記憶障害以外にも様々な症状を来たすことがあり、「認知症 = 物忘れ」ではないことに注意が必要となります。 また、認知症の合併率は80歳で10人に1人、90歳で4人に1人であり、特別な病気ではありません。

※1.後天的 = 生まれつきではなく、生まれた後に新たに獲得した性質のこと。

○認知症の症状(中核症状と周辺症状)
認知症の症状は中核症状と周辺症状に分類されます。

Ⅰ.中核症状
中核症状は神経細胞が減少したことによる症状であり、記憶障害と認知機能障害※2があります。症状は患者全員に認められ、病気の進行とともに徐々に増悪します。

Ⅱ.周辺症状
中核症状に付随して出現した症状であり、精神症状や行動異常があります(幻覚・妄想・徘徊・不眠・抑うつ・暴言・暴力など)。症状は患者の一部に認められ、病気の進行とともに増悪するわけではありません。

※2.認知機能と認知機能障害

Ⅰ.認知機能
五感を通じて自分の住んでいる世界を理解して、外界の変化に対応する能力のことです。言い換えると、情報を収集し、状況を判断して問題を解決する能力(いわゆる知能)と言うことができます。

Ⅱ.認知機能障害
上記の認知機能が障害された結果、問題を解決する能力が低下した状態と定義されます。

○認知症の診断
Ⅰ.認知症の診断基準(DSM-4より)
①以下の2項目に該当する認知障害
1)記憶障害
新しいことを学習することと、過去に学習したことを思い出すことが障害されること。
2)認知機能の障害が一つ以上ある
②社会的または職業的機能が著しく障害され、病前の機能レベルから有意に低下している。
③症状はせん妄の経過中のみに出現するものではない。

上記① ~ ③の全てを満たすことで認知症と診断されます。言い換えると、認知症とは記憶障害を来たした結果、問題を解決する能力が低下して、日常生活を営むことが難しくなった状態と言うことができます。

Ⅱ.認知症の診断
認知症の診断基準に加えて、医師の診察・認知機能検査・画像検査・採血検査をもとに総合的に判断して診断名を決定します。

○認知症の治療
認知症の診断をもとに、①中核症状に対する薬物(物忘れの進行を遅らせる薬),②周辺症状に対する薬物を用いた治療を行います。認知症の原因により選択される薬物が異なるため、注意が必要となります。