診療ノート

#18 乳がん検診

女性の15~16人に一人が乳癌になると言われる時代になりました。スーパーで買い物をしている女性が20人ほどいれば一人は乳癌になっているわけです。そう考えると決して他人事ではないでしょう。また5~6年前なら30代の乳癌だと「えっ、若いね」と驚いたものですが、最近は30代の乳癌と聞いてもまったく驚かなくなりました。

まず、検診とは何か。何も症状のない方に対して異常があるのか、ないのか検査する場です。症状のある方はどうか検診まで我慢して診てもらおうとせず、早めに医療機関を受診して下さい。検診は診察や診断をする場ではありません、異常があるかないか選別する場です。異常があれば専門機関を受診するよう促すだけです。

現在の乳癌検診は「触れる前の超早期乳癌を発見したい」が目標です。
乳癌はしこりで発見される、そう思っている方がほとんどではないでしょうか?
しこりをつくらず乳房内に拡がって行く癌もあります。触っただけで何もないから大丈夫なんてことは絶対言えないのです。ですから視触診だけの乳癌検診など現代ではありえないのです、ご注意を。

検診に来られた方から今後、乳房超音波検査とマンモグラフィのどちらをやったらいいでしょうか?どちらの方が性能いいんでしょうか?とよく質問されます。
マンモグラフィは乳房を圧迫して撮影するレントゲン検査です。しこりをつくってこない乳癌にも有効な検査で乳房全体を1枚の画像で診ることができます。それゆえ2名の読影医がダブルでチェックし見落としを減らすことができます。後から見直しもできます。検診にはピッタリの検査方法です。欠点はしこりの14%ぐらいが画像として出てこないことがあります。もう一つは「ものすごーく痛い検査よ、息もできなかったわ」などという噂が独り歩きしていることです。我々の技量不足により経験された検診者に苦痛を与えてしまったことが一番の原因であり大変申し訳ないことですが、噂ほど痛くなく、また恐ろしい検査ではありませんので、ぜひ機会があれば逃げないで受けてください、お願いします。

乳房超音波検査は乳房にゼリーをつけて検査機器をあててみる検査方法で苦痛は一切ありません。しこりや液体、粘液の溜りなどを診るのに有効です。欠点はしこりをつくってこない乳癌はちょっと苦手な事。検査をした者が選んで撮った正常部分か、気になったところを撮った画像しかない事です。漏れなく乳房の全てを画像に残しておくことができないため2名の読影医がチェックしても最初に検査をした者が残した画像の部分しかダブルチェックができません。

では話を戻して、検診はできることなら視触診、マンモグラフィ、乳房超音波検査の3つをやるのがベストでしょう。でも「毎年乳房を挿まれるのはちょっとねー」と言う方は乳房超音波検査を毎年やって隔年でマンモグラフィをやるのはどうでしょう。それでも大変と言うのであればマンモグラフィと乳房超音波検査を交互にやるのはどうでしょう。どちらかの検査方法だけに偏ってしまうのは、あまりおすすめしません。

両親や旦那さん、子供がおられる方は自分のためだけではなく家族のためにと思って受けてください。これを読まれて乳癌検診を受けてみようかなと思った方、「もし乳房が片方なくなってしまったら」「片方だけ形が変わってしまったら」と考えてみてください。

乳癌検診を受けましょう。早期発見し乳房・命を守るのは検診の場にあなたが来てくれるかどうかにかかっているのです。