診療ノート

#61 眼瞼下垂

眼瞼下垂とは、上眼瞼(上まぶた)が正常の位置より下がった状態で、軽症では問題ありませんが、中等度以上になるとものが見えにくくなってきます。

眼瞼下垂は、先天性眼瞼下垂、後天性眼瞼下垂、偽眼瞼下垂に分類されます。

1.先天性眼瞼下垂

先天性眼瞼下垂は、上眼瞼挙筋の発達異常や、その筋肉を動かす神経の発達異常により発生します。多くの場合は片眼に起こり、生まれつきまぶたが下がっている状態です。弱視の原因になることがありますので、眼科検査が必要です。

2.後天性眼瞼下垂

後天性眼瞼下垂はもともと普通にまぶたが開いていた人が少しずつまたは急にまぶたが下がってきた状態です。ほとんどの場合は数年間かけて少しずつ下がってくる腱膜性(けんまくせい)の眼瞼下垂です。腱膜とはまぶたを上げ下げする筋肉(上眼瞼挙筋)の末端部の腱のことであり、これが伸びたりゆるんだりしてしまうことによる眼瞼下垂を腱膜性眼瞼下垂といいます。加齢が原因となることが多いのですが、ハードコンタクトレンズの長期装用者や内眼手術(白内障手術、緑内障手術、硝子体手術など)の既往のある人にも生じてくることもあります。多くの後天性眼瞼下垂がこの腱膜性眼瞼下垂ですが、重症筋無力症や、動眼神経麻痺などのように、筋肉や神経が原因の場合もありますので注意が必要です。

重症筋無力症は、筋力低下と易疲労性を主な症状とする自己免疫疾患で、眼瞼下垂、複視などの眼症状が起こりやすいことが特徴です。

動眼神経麻痺は、脳神経の一つである動眼神経の障害により生じ、眼瞼下垂、眼球運動障害、瞳孔異常を起こすことがあります。糖尿病、脳動脈瘤、頭部外傷、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍などによって起こります。瞳孔異常(瞳孔散大)を伴う場合は、脳動脈瘤がないかすぐに検査が必要です。

3.後天性眼瞼下垂

偽眼瞼下垂は、眼瞼皮膚弛緩症、眉毛下垂、眼瞼痙攣、眼球陥凹、小眼球症などにより、一見眼瞼下垂のように見えてしまう状態です。

<治療>
治療ですが、先天性眼瞼下垂や腱膜性眼瞼下垂に対しては、まぶたをあげる手術を行います。
眼瞼下垂の手術は、眼科(眼形成外科)と形成外科で行われております。
術前には、視力、眼位、眼球運動、角膜などの眼表面の状態、ドライアイの有無などの評価が必要です。眼科(眼形成外科)における眼瞼下垂手術は、眼瞼下垂により視機能に影響がある場合に手術適応となります。Quality of Vision(見え方の質)の改善が目的で、瞼により瞳孔が隠れてしまうかどうかによって手術適応が決められます。これはMRD(margin reflex distance、瞼縁角膜反射間距離)によって判断されます。

手術法は、上眼瞼挙筋機能が十分にある場合は、挙筋腱膜短縮術・前転術、あるいはミュラー筋タッキングと呼ばれる方法が行われます。
上眼瞼挙筋機能が不良な場合は、ゴアテックスや大腿四等筋腱膜を用いて、前頭筋吊り上げ術を行います。
眼瞼下垂手術により、頭痛、肩こりが改善するという報告がありますが、このような多様な因子がある自覚症状と眼瞼下垂との関連は、まだ十分明らかであるとは言えません。眼科(眼形成外科)では、視機能に影響がある場合が手術適応になります。